□ 手話を「振り付け」発言
この稿を書くきっかけとなったのは、元 AKB48 の大島優子の次のニュースにある発言だった。
YAHOO! ニュース「大島優子、手話通訳シーンに挑戦『小学生の時、手話クラブだった』」 11/19(木) 10:24配信
テレビ朝日系で放送中の木曜ドラマ『七人の秘書』19日放送の第5話で、東京都知事・南勝子(萬田久子)の秘書をしている風間三和(大島優子)。
都知事の長い演説シーンで三和が手話通訳をするシーンが登場。大島は「手話は難しかったですが、振り付けを覚えることには馴染みがありましたので、楽しく練習できました。それと、小学生の時に手話クラブに入っていて、将来の夢の一つとして手話通訳士に憧れていたこともあったので、演じることができて夢がかなったような気持ちになりました」と、話していた。
この発言について違和感を感じた聴覚障害者や手話関係者たちの声が、ツィッターで上がった。
「今は秘書が演説の手話通訳なんかしない、ちゃんと手話通訳者依頼する。現場考証ができてない」
「手話が間違っている」
という指摘もあったが、今回のテーマに関わらないのでさておく。この稿に関わるのは次の指摘だ。
「手話を言語として見ていないことが透けて見える気がします。」
「してないんでしょうね。台本に合わせて、語彙レベルの置き換えを『振り』として手話指導されたのなら。」
この発言を見て、AKB48 をモデルにしたマンガ「AKB49 ~恋愛禁止条例~」を思い出した。大島優子も登場している。実はこのマンガ、自分は手話歌を出そうとしたマンガだと見ている。結局、手話歌は出ないままとなっているが。なぜ「手話歌をやりかけたマンガ」だと考えたのか、その理由とその背景にある事情を説明したい。
□ マンガ紹介
- AKB49 ~恋愛禁止条例~
- 原作:元麻布ファクトリー、漫画:宮島礼吏、原案協力:高橋ヒサシ
- 週刊少年マガジン(講談社) 2010年第39号より 2016年第8号まで連載。単行本 全29巻。
登場人物は多く、実在の人物も多数出る。が、この稿を読むにあたって覚えておく名前は次の三つ(二人)だけでいい。
- 浦山実 マンガオリジナルの人物で主人公。初登場時は男子高校生。
- 浦川みのり 浦山が女装して AKB48 に加入、アイドルとして活躍。
- 有栖莉空 マンガオリジナルの人物。AKB48 で有栖だけが、浦川が男と知る。
次に、有栖莉空を中心にしてまとめた年表を示す。
西暦 | 少年マガジン 掲載誌 |
話 | サブタイトル | 内容 | 単行本 |
2010 | 39号 | 連載開始 | |||
2011 | 51号 | 第61話 | 解禁 | マンガだけの曲「放課後☆下克上」初出。 | 第8巻 |
2013 | 2・3合併号 | 第113話 | 接触 | 有栖莉空、初登場 | 第14巻 |
4号 | 第114話 | ありすりあ | 有栖の耳が聞こえている描写あり。全く見えてない他室でのうわさ話を聞いている。 | ||
34号 | 第143話 | NUMBER8 | バスジャック撃退で有栖が聞こえてる描写あり。 次回でこのバスジャックがドッキリであることを明かされるが、撃退は浦川の独断での奇襲でシナリオにないとっさの行動。本当なら有栖には対応できないはずのもの。 |
第17巻 | |
36号 | 第145話 | てれびのお仕事 | 浦川がテレビ見て吹き出したのを有栖が気づく描写あり。 | ||
43号 | 第151話 | 8点満点 | 金色亭八葉師匠のたくらみの密談に聞き耳立てる有栖。 補聴器をつけてる可能性はあるにしても、感音性難聴では耳だけで会話を理解するのは無理がある。 |
第18巻 | |
46号 | 第154号 | ―迷い猫の恋の道― | 金色亭の電話での会話を隠れて聞き耳立てる有栖。 角度的にも口が見えない位置なのに、「京都弁じゃないし」とツッコんでいる。補聴器つけてるとしても、感音性難聴で方言かどうか弁別するのはかなり無理がある。 |
||
2014 | 9号 | 第167話 | 両手の使い道 | 握手会に来た耳が不自由な人の話、有栖は特に反応なし。手話歌の話はまだない。手話歌の検討開始? | 第19巻 |
23号 | 第181話 | PARTYが始まるよ | 最後のカットで有栖「これで全部おしまいにするから‥‥」と意味深な発言で引き。有栖の聴覚障害の設定開始 | 第21巻 | |
24号 | 第182話 | スタートエンド | 秋元康プロデューサーの回想で、有栖に事情があることをほのめかす。当初はオーディションで不合格としていた。AKB48 に入れたことを後悔。 | ||
29号 | 第186話 | ひみつ | 有栖、耳が聞こえないことが明らかにされる。仲間にはまだ秘密。耳が聞こえない描写もここで初めて出てくる。 | ||
30号 | 第187話 | 君のことが好きだから | 有栖の独白で耳が聞こえなくなる経緯の説明。手話歌の伏線 | 第22巻 | |
39号 | 第195話 | スキャンダラスな I LOVE YOU | 有栖、活動辞退。 | ||
40号 | 第196話 | パーティーしちゃう病 | 浦山、有栖の真相を知る。 | 第23巻 | |
41号 | 第197話 | 涙と笑顔 | 秋元プロデューサーがオーディションで、有栖を不合格にしていたのを合格にしたいきさつを説明。 | ||
43号 | 第199話 | 10年桜 | 「放課後☆下克上」を手話とともに歌う場面、浦川が手話を勉強する発言あり。手話歌の伏線 | ||
44号 | 第200話 | 恋愛禁止条例 | 有栖、耳の治療のために渡米。 | ||
2015 | 10号 | 第216話 | 1% | 休暇のハワイ旅行で再会。有栖は検査のためにハワイに来ていたという。 | 第25巻 |
12号 | 第218話 | 一生分のアイドルパワー | 有栖、検査の結果が良かったとのことで母国に帰れるという。 | ||
9月16日 「365日の紙飛行機」、NHKプレマップで初公開。 | |||||
51号 | 第255話 | 最終ベルが鳴る | 有栖、緊急事態で再登場ステージに立つ。 | 第29巻 | |
2016 | 1号 | 第257話 | RIVER | 有栖、ステージを去る。耳が聞こえていない描写あり。メトロノームでリズムを取って一人でダンス。伏線断念 | |
8号 | 最終話 | AKB49 | 浦山が働いているコンビニ店で買い物する有栖。 「今日何時?」「は ち じー」「じゃまたくる」浦山が口型をハッキリ見せて、有栖が読唇してる模様。二人がつきあってることを示唆。 |
□ 有栖莉空 失聴の経緯
第186話「ひみつ」で、有栖の耳が聞こえないことが明かされる。AKB48 に入る前から耳が聞こえていなかったという。右耳は完全に聞こえなくなっており、左耳も四ヶ月以内に音を失う。左耳に耳穴式の補聴器をつけて髪で隠している、そういう設定になっている。
が、これ以前の有栖が出ている場面を追うと、逆に耳が聞こえている描写になっている。その一例として、第154話「―迷い猫の恋の道―」での場面を示す。角度的にも電話している口を読み取れない位置になっているし、「京都弁じゃないし」と方言まで聞き取れている。本当に聴覚障害を持っているのなら、この聞き取りはあり得ない。
つまり、有栖は当初は耳が聞こえている設定だった。途中から耳が聞こえない設定に変わったのだ。だから、第186話「ひみつ」で、初めて耳が聞こえていない描写が出てくる。
ところで、この場面でかえってつじつまが合わなくなっている事を指摘しておく。
イヤホンで音楽を聴きながら練習していたのだが、自分が呼ばれてるのに気づかない。これで耳が聞こえていないことを描写している。気づいた有栖がイヤホンを外して会話しているのだが、有栖は改めて補聴器をつけていない。聞こえていないのに、補聴器なしで会話しているのだ。
この事から、作者も耳の聞こえていない人の描写に慣れていないことがうかがえる。急な設定の変更で下調べも十分にできないまま、描写の矛盾に気づかずに描いたのだと思う。だがまあ、この程度の矛盾はこのマンガにはよくあることで、そのまま強引に押し切っている。そもそも女装してアイドルをやるという、このマンガの設定自体が強引なのだから。
なお、Wikipedia やファンのブログでは、失聴原因を「突発性難聴」としているものがあるが、このマンガには失聴原因はまったく書かれていない。突発性難聴を思わせるカットがあるのでそう誤解したのだろうが、この前に前兆があり、入院する場面が描かれている。こちらを見るとメニエール病っぽい印象になる。突発性難聴は、前兆なしに失聴するので「突発性」と名がついているのだ。実際には説明にブレがあるので、具体的な失聴原因は特定できない。おそらく具体的な原因は考えておらず、話に合わせてさまざまな耳の症状を適当に拾い上げていると見るべきだろう。
なぜ Wikipedia に「突発性難聴」の記述が入ってしまったのか、履歴を追ってみたら、問題の多い人物が追加したものらしい。記述に問題があることを指摘されて二回ブロックされているが、改まらないので三度目に無期限ブロックされている。
管理者から「AKB49」の項目自体も問題があることを指摘されており、ノートで「過剰な内容の整理」を求めている。ファンがよってたかって書き込んでおり、内容を整理しないまま放置されている。
この「突発性難聴」の裏を取るために、単行本全29巻を、何度も読み返してしまった。Wikipedia「AKB49」の記述内容は、そのまま信用しない方がいい。
□ 手話歌につながる伏線
話の途中でなぜ強引に、有栖を耳が聞こえない設定に変えたのか。
このマンガで手話歌を出そうという意図があったからだと見ている。
手話歌に関わるきっかけが、第167話「両手の使い道」にある。ここで握手会に来た耳が不自由な人の話が出てくる。ここでは手話歌をやる話は出ていないのだが、内部ではこの機会に手話歌をやる検討を始めたのだろうと思う。
第187話「君のことが好きだから」で、突発性難聴と読者に誤解される場面があるのだが、実はここに手話歌につながる伏線がある。浦川みのりのパフォーマンスに夢中になって、耳が聞こえていないことを忘れていたのだった。浦川には、耳が聞こえなくても楽しませる力があることを示唆する。
そして第199話「10年桜」で、浦川が「放課後☆下克上」を手話とともに歌う場面がある。そしてその後に浦川が手話を勉強すると発言している。この「放課後☆下克上」は、このマンガの中だけに出てくる架空の曲で、実在のものではない。
このように伏線が張られているのだが、実際には手話歌は出ないままとなっている。
第257話「RIVER」で、有栖が最後のステージに立つが、手話歌ではなく、メトロノームを使ってリズムを取って一人でダンスしていた。去り際に浦川との話がかみ合っていない場面で、完全に失聴している事を示唆する。
そして最終話「AKB49」で、コンビニ店で会話する浦山と有栖。浦山がわざとらしく「は ち じー」と発話している事で、有栖は耳が聞こえておらず口の形を読んで会話していることがわかる。二人がつきあっていることを示唆する場面でもある。
□ 365日の紙飛行機
さて、実際の AKB48 では、この時に「365日の紙飛行機」を発表している。公式には手話歌とは一言も言ってはいないのだが、これを手話歌だと言いはやす人がいた。Yahoo! 知恵袋に出ていた質問を示す。 [同一内容の PDF (435.6K)]
Q. akb48の365日の紙飛行機なんですが 振り付けの中に手話が入ってますか?
A.
よくわかりましたね
1、人生は紙飛行機
2、もっともっと
3、365日ですね少し混ざっていましたね。
ネタ切れ?w3個ありました。
僕はこの質問自体が、制作側がしかけたステルス・マーケティングだと見ている。根拠は二つある。
- 実際の振り付けを見ると、手話として読めるのは「人生」「飛行機」だけ。
「もっともっと」は、そう言われれば、これがそうかも? というのがあるが、言われなければ気づかない。「365日」にいたっては、まったく読み取れない。制作側の情報がないと、回答できないものだ。手話を知ってるファンでもできない回答であり、不自然なのだ。 - この回答者のプロフィールを見ると、質問はしたことがなく、回答は二件しかない。いずれもベストアンサーになっている。参加日も、この質問の出された日に近い日付になっている。
したがって、この質問回答は自作自演によるステルス・マーケティングである可能性が高い。自分で質問を用意し、ID を変えて再ログイン、回答をつけたものだろう。
Yahoo! 知恵袋は、以前からステルス・マーケティングが多い事で知られている。常連回答者なら、体感的に知っている事実だ。実際、Yahoo! 知恵袋は複数 ID の登録ができるようになっているし、ログアウトしてすぐに別 ID で再ログインできるように作られている。知恵袋の運営側でも、承知の上であえてそう運用している。この辺は自分もいろいろと証拠をつかんでいるので、ステルス・マーケティングがおこなわれていると自信をもって断言できる。が、今回のテーマからは外れるので、ここまでにしておく。
この質問では手話歌だとは言ってないのだが、これとは別に「手話歌だ」と言うファンがいた。
実は、音楽を耳の聞こえない人に伝えようとしない、偽善手話歌をやってる人達ですら、この歌を手話歌だとは見ていない。自分達でやるときはまったく違う振り付けをしているのだ。「人生」「飛行機」すら、そのままでは使っていない。
制作側が内部で、耳の聞こえない人のために手話歌を検討し、用意されたのが「365日の紙飛行機」だと考えられる。だから、こっそりと手話歌だとうわさを広めようとした。だが、さすがに公式の設定にすることはできなかった。
それはそうだろう。全然手話になっていないからだ。読み取れるのは「手話」「飛行機」だけで、歌詞すら表現していない。手話には、音楽の表現すらまったくない。これで手話歌だと言い張るのはかなり無理があろう。
手話歌として評価するなら、まったくの駄作であり、失敗作とするしかない。耳の聞こえない人達に伝える歌には、なっていない。これはさすがに、制作側でも自覚していると思う。だから、マンガ「AKB49」で伏線を仕込んだものの、手話歌として出すのはあきらめた、と考えられる。
内部で手話歌の検討を始めたときにはわからなかった、手話歌の困難さと闇の深さが、調査を進めてようやく理解できたのだろう。
□ 手話歌の闇
ほとんどの手話歌は、耳の聞こえない人に音楽を伝える工夫がない。初めから音楽を伝えるつもりがないのだ。手話歌には左翼活動家が関わっており、偽善をやるために手話歌を利用している。この辺はこのブログでも詳しく説明してあるので、そちらを参照してほしい。
特に芸能界としては、鳥塚しげき・のり子夫妻の起こした「手話ミュージックコンテスト」のスキャンダルが大きいと思う。鳥塚しげきはワイルドワンズにいたことがあり、その縁で加山雄三にゲスト出演してもらっていた。
が、ミュージックコンテストで不公正な審査をして、真に音楽を伝える手話歌を追求していたろう者グループ Deaf-Unit を故意に落とした。このコンテストで審査員を務めた有名な手話通訳者の故・丸山浩路も、審査が不自然だった事を証言している。
この Deaf-Unit は、この手話ミュージックコンテストでそれまでに二回連続して優勝しており、その実力を証明している。偽善者にとっては、ちゃんと音楽を伝える本物の手話歌が邪魔だったのだ。本物があると、自分たちのやってる手話歌がインチキだとバレてしまう。だから落とした。
これがバレて、コンテスト自体がおこなわれなくなる。加山雄三も、手話歌に協力しなくなっている。
手話コーラスについて「手話ミュージックコンテスト」
わかんさんのブログ「手話歌をやる偽善者の正体」
手話歌を悪用する左翼活動家がいるのだ。彼らはどんなウソでもつくし、卑劣な事もする。悪行がバレても逃げるだけで、自分では絶対に責任を取らない。
同様な例は、東日本大震災にもある。京都の五山送り火で、被災地の木材を護摩木に活用しようとした、自称芸術家がいた。この人は木材の放射能検査をごまかそうとしたためにかえって騒動が大きくなり、逃亡した。残った関係者達がその尻拭いをさせられたのだ。責任者が逃亡したことは、当時のマスメディアは報道していない。
手話歌の世界にこういう偽善者がいては、AKB48 でもどんなスキャンダルに巻き込まれるかわからない。これが、手話歌の闇なのだ。この闇がある事を知って運営側が断念したと、想像できる。元々は耳の聞こえない人のためを考えて始めた事だろうが、手話歌ではこの目的を達成できない上に損害をこうむる危険もある、そう気づいたのだろう。
ここで最初の話、大島優子の手話を振り付けとした発言につながる。
手話歌をやってるほとんどの人達は、手話歌での手話を振り付けとしか見ていない。表向きの発言ではともかく、内心では手話を言語とは見ていない。だから、手話を言語として真面目に学ぼうとしない。そして手話ができない人にも平気で手話歌をやらせる。それでは音楽を伝えることはできないのだが、それを承知の上でわざとやっている。
AKB48 の中にいた大島優子も、そう見ていることがうかがわれる。
そういう姿勢が見えるから、聴覚障害者には手話歌を喜ばない人が多い。
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